【修学旅行レポート】宝仙学園中学・高等学校 愛媛県八幡浜など西日本 22年11月16~21日


農機具の清掃を手伝う生徒たち

生徒の思い出に残る民泊 農業などの仕事を手伝う

 

 宝仙学園中学・高等学校共学部理数インター(東京都中野区、富士晴英校長)は、生徒が主体となって各種の行事を進めていくのが大きな特徴だ。教諭たちは、プレイヤーである生徒を見守りつつ、生徒が目指す夢に対して並走するコーチのような役割を担っている。

 「理数インター」とは生徒を育成する人物像を示したもので、理数は、理系を表すのでなく、「論理的に考えて相手に伝える能力」を指す。インターは「人と人を結び付ける人材」という意味だ。

 高等学校での宿泊を伴う学習行事は各学年であり、1年生では「関西研修旅行」、2年生は「修学旅行」、3年生は「勉強合宿」という名称で実施する。どの学年でも行うことから特別なものではなく、日常の学校生活の延長線上にある行事と位置付けている。
2022年11月に実施した2年生の修学旅行は、九州、四国、関西を巡る西日本周遊旅行。元々、修学旅行はアメリカを行き先としていたが、コロナ禍でその実施が困難になり、国内となった。

 旅行期間が1週間近くあるため各所を周遊するという行程が最初に大枠で決まり、それを踏まえ、生徒たちが飛行機、フェリー、新幹線、バスなどいろいろな乗り物を利用して移動しやすいという理由で行き先に西日本を選んだ。また、生徒の満足度が高いといわれている民泊を同校として初めて取り入れたいという意向が学年教諭たちにあり、それらの条件に合致したのが西日本だった。

 11月16日から21日までの5泊6日で実施。2年生の全7クラス、230人が参加した。

 1日目は、飛行機で九州に降り立ち、熊本2コース、福岡5コースの計7コースに分かれて、各地の名所などを巡った。目的地の大分県・別府温泉に全員で宿泊した。

 2日目の午前中にフェリーで移動し、愛媛県の八幡浜に入る。7クラスが7地区に分かれ、入村式を経て、民泊を開始。

 3日目は、家業体験などを行いながら昼まで民泊先の人と過ごす。離村式の後、道後温泉に移動して、観光を楽しみ宿泊。夜は修学旅行委員が企画したイベントが行われ、盛り上がった。

 4日目は、瀬戸内しまなみ海道を渡って鷲羽山に向かうコースと、瀬戸大橋を利用して鷲羽山に向かうコースの2コースに分かれて、クラス別研修を実施した。

 5日目は、クラスの枠を超えて仲の良い生徒たちで班を作り、鷲羽山から神戸までを巡る。

 6日目も同じ班で神戸から新大阪までを巡った後、新幹線を利用して東京に戻った。

 今回の修学旅行の主な狙いは三つ。1点目は、高校1年次に奈良から京都まで巡った関西修学旅行と同様に生徒主体で旅の行程を作り、さらにその技量をブラッシュアップすること。民泊を通じて家業を手伝いながら全く知らない人たちと一緒に過ごすことが2点目。3点目は、2年生での最後の行事であり、生徒たちに楽しく過ごしてもらうという意図があった。

 特にこの年の修学旅行の目玉としていた民泊は、教諭たちの狙い通り、生徒たちの思い出に残るものとなった。今回の修学旅行を担当した大島勇人教諭は「都内で暮らす子どもたちにとって第1次産業は縁遠い。野菜や肉などがどういう過程を経てスーパーに並んでいるのか全然分かっていなかったり実感がなかったりする。また、この学年は人懐っこい子が多いので、受け入れ先の民泊家庭の迷惑にならず、良い経験ができるだろうという期待もあった」と語る。

 民泊先に八幡浜を選んだのは、230人の全学年の受け入れが可能だったから。また、八幡浜地区としても民泊の受け入れは今回が初めてで、その新たなチャレンジに興味をひかれたという。

 八幡浜の民泊では1家庭に約4人ずつ、55家庭で受け入れてもらった。みかん農家の家庭が大半で、みかんの収穫を体験した生徒が多かった。漁業を営む家庭では実際に船に乗って釣りに出かけた生徒も。ほぼ全員の生徒が野菜を切ったり魚をさばいたりしての料理づくりも手伝った。

 「修学旅行後に生徒たちは『民泊が一番楽しかった』と口をそろえて言っていた。私が一番印象に残ったのは離村式。子どもたちが各家庭に別れのあいさつをする場面で、みんな感謝の気持ちや楽しかったということを全力で語っていた。涙する子も大勢いた。たった1日でも強い関係性が築ける民泊の魅力を感じとった」と大島教諭。

 また、全体の総括について大島教諭は、「各日程をこなしていく中で生徒同士の距離感が近くなった。前年の関西研修旅行と比べて学年がさらに一つにまとまった修学旅行だった」と成果を語る。

囲炉裏を囲んで民泊の家族と一緒に食事

農機具の清掃を手伝う生徒たち

離村式での記念撮影

たった1日過ごしただけでも和気あいあいの関係に

 
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